2005年右乳房全摘、局所再発・多発肝転移・多発骨転移・胸膜播種転移治療日記。

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がん治療最後の壁
 


『再発 がん治療最後の壁』

田中秀一著  





著者が医師でも患者でもなく、読売新聞 医療情報部長 という肩書きに興味を持ち、読んでみた。




本文中には、再発したがんは「完治させることはできない」「画像上消えても治ったことにはならない」「治療が難しい」・・・など、多発性進行がんを生きている私にとって厳しい言葉が何度も繰り返され、気持ちが萎えてしまいそうだった。
一方、新しい治療法や緩和ケアによる延命効果の実例からは、逆に生きる勇気をいただけた。

がん再発とは、に始まり、がん再発にどう向き合うか、で締めくくられているこの一冊から、日々の生活であまり考えないようにしている“余命を生きる”ということを、今一度考えさせられた。

今日まで私は、<腫瘍マーカーを下げる><転移病巣を縮小させる>ことを目標に抗がん剤治療を続けてきた。
でもこの本を読み、抗がん剤の使い方に新たな気づきを得た。
それは「抗がん剤は患者さんを幸せにしているのか?」と疑問を投げかける医師の言葉にあった。
その医師は「本当の治療目標は、患者さんの幸福に直結するものであるはずで、進行がんの場合に目指すべきなのは、QOLの改善と延命効果です。これを『がんと長くつきあうこと』だと説明しています」とおっしゃっている。

患者の幸せとは・・
一人ひとりの患者さんの価値観により、何を幸せとするのか人それぞれだろう。
私の幸せは、がんと共存しながら一日でも遠い未来を生きること、つまりその医師の言葉通り、がんと長くつきあうこと。
そのために抗がん剤治療をしている。
幸せに繋がっているはずの抗がん剤治療だけれど、がんと長くつきあえるのかどうか、誰も教えてくれない。


最後の壁を越えられる日はくるだろうか。 (・e・)


   
マーカー値上昇
 


昨日はゾメタ38回目の投与の日だった。


診察時に先日(2週間前)の採血結果を聞いた。


先月、基準値を超えて上がっていたマーカー値CA15−3は、今月も下がることなく更に上昇していた。
「フェマーラを飲み始めて2週間の採血です。この数値ではフェマーラの効果の判定はできません。もう1ヶ月続けてフェマーラを服用して下さい。次のマーカー値は横ばいもしくは下がっているといいですね」
上がってしまったマーカー値に動揺しないよう、言葉を選んで患者に接して下さる主治医。
倍増する勢いの上昇もありかな・・と覚悟していたので、この程度の上昇は何とか受け入れられる。
フェマーラの効果を信じて来月の採血まで強い気持ちを持って飲み続けたい。
今は我慢の時だと思う。

それから今も続く胸の痛みを主治医に伝えた。
「ん〜肋間神経痛かも知れませんね」とおっしゃる。
それでも多発骨転移があり不安な気持ちを伝えると、触診して下さった。
「あ〜ぁ、もう放射線が照射してあるんですね。もう放射線治療はできませんね」
一年半ほど前に照射した胸壁の治療痕がまだ残る術側の胸を診ておっしゃる。
こんな時、何度も何度も主治医が替わってしまうと、経過など少しも把握されていないことがとても残念に思う。
主治医には自分の治療歴は十分に引き継ぎがされていて、今の自分の状態を理解してくださっているなんて思ってはいけない。
患者自身が、その都度、その都度、根気良く丁寧に過去の治療経過を伝えることが、誤解の無い主治医と患者の関係を築くことにおいて肝要かもしれない。

触診を終えると「一度RI検査をしてみましょう。もう長い間検査していませんよね?」
増悪しているだろう結果を目にするのは、できれば避けたいと思ってきたけれど、現実を正確に受け入れなければならない時がきた。
来月、RI検査の予約をして診察を終えた。





天候が不安定なこの頃。
病気を患う身体には、本人にしかわからない微妙な体調の変化を感じる。



せめて心だけでも穏やかでありたい。   (・e・)


新たな痛み
 


術後の平らな胸板に痛みを自覚してから1週間。


ようやく温帯低気圧になった台風が接近していた1週間前の3連休最終日。
今にも降り出しそうな曇り空だった朝、草刈をするという夫と一緒に草取りをした。
以前から気になっていた猫の額ほどの畑の雑草を、黙々と草刈釜を使って小一時間。
やぶ蚊と悪戦苦闘しながら、額から流れる汗を拭いながら、昨年こぼれた種から発芽した草花を大切に避けながら、雨粒が落ちるまで頑張った。

その翌日、大きく息をすると術後の右胸に痛みを感じた。
平らな胸の上から痛みを感じる辺りを手で軽く押すとズキッと痛む。
くしゃみやしゃっくりをしても痛む。
ピンポイント的な痛みを気にしつつ、草取りの筋肉痛かもしれない・・と心細い期待をしていた。

その草取りから1週間経過した。
筋肉痛なら日にちの経過とともに改善されるはずなのに、今も痛む。
新たな骨転移かな・・と気持ちが沈んだ。 






治療をしているのに進んでしまう病が哀しい。 (・e・)



最近の体調
 


フェマーラを飲み始めて約3週間。


自分で決めたレジメンがベストなのか・・と不安な気持ちは今もぬぐえない。



化学療法からホルモン療法へと変更してから、ドセタキセルの副作用も気にならない程度にまで落ち着いた。
しかし、最近アレルギー性鼻炎のように、目や鼻がかゆく、やたらとくしゃみが出る。
くしゃみも一度に何回も連発するような具合。
目の疲れも以前に比べてひどく、夜になるととても辛く、ますます早く眠る毎日になっている。

腰痛も不安な症状が続いている。
ちょっとした腰のひねりでズキッと痛むので、身体を動かす時は慎重にならざるを得ない。
最近は腰ばかりではなく、太ももの外側や向こう脛の外側、肩やかかとまでも時々痛む。
気圧の影響なのか、ホルモン治療の副作用なのか、多発骨転移の増悪なのか・・

昨年にも増して今年の夏は暑さが厳しい。
一年前を思い出してみると、丁度TC治療を始めた頃で副作用がきつかったけれど、今よりも体力はあったように思う。
猛暑にもかかわらず、化学療法を続けながら、なんとか暑い夏を乗り越えられた。
けれども今年は身体が動かない。
ホルモン治療で身体は休めているはずなのに、身体が動かない。

他界した母の言葉が思い浮かぶ。
「今年の夏はえらかった(辛かった)」
秋の終わり頃入院して、年末年始を病院で迎え、一月の終わりにそのまま病院で力尽きた母は、最後の夏が終わる頃そう呟いていた。





今朝、女子サッカーW杯の決勝戦をTV観戦した。
前半戦が終わりハーフタイムになった時、夫が「すごい朝焼けだ」と驚いた。
急いで窓を開けてみると、オレンジ色の光があたり一面に輝いていた。
美しい空だった。
優勝したなでしこジャパンからは最後まであきらめないことを教わった。



“あきらめない”って美しい。     (・e・)


午後4時の散歩
 


午後4時前後になると、決まって愛犬が散歩の催促をする。


散歩に連れて行け、と言わんばかりに吠え続ける。



散歩当番だった子供たちが家を離れてから、義父が彼らに代わって散歩に連れてい行ってくれていた。
けれども、ここ最近の猛暑続きで、高齢の義父も散歩後に熱中症のような症状になってしまった日があった。
その日以来、化学療法も休薬中の私が、散歩に連れて行っている。

午後4時といっても外はまだまだ気温が高く、傾きかけた西日は肌を焦がすように照りつける。
それでも、真っ青に広がる水田を這うように吹く風は、生ぬるいけれど時折ひやっとして気持ち良い。
遠くのほうから、サワサワサワ・・と美しく稲を揺らしながら吹いてくる風の音も、また心地良い。
遠くに見える入道雲や何処からともなく聞こえる蝉の声。
汗びっしょりになって、アスファルトに座り込み、水筒を傾ける下校途中の小学生たち。
ありふれた午後4時の景色。
そんな田舎道を歩きながら、このささやかな平凡な時間が永遠に続けば良いのに、と思う。





水田をなぞる風は簾越しにリビングまで届く。
散歩の暑さに比べたら、家の中は涼しくて快適。
今日もエアコンを使用せずに過ごせるかな?


そろそろ散歩の時間・・愛犬が呼ぶから行って来よう。   (・e・)


通院日
 


2週間ぶりの通院。


今日は血液検査と薬の処方。



点滴治療をしている時は、ほとんど毎週のように診察があったけれど、フェマーラの内服になって2週間、受診の間隔が空くのが嬉しいようで不安でもある。
マーカー値は院内では検査が不可能なので、結果はまた2週間後。
余計なことは思い煩わず、朝食後、一錠のフェマーラを飲み忘れないようにしたい。

今日の採血は、見慣れない技師さんで、ちょっとドキドキしながら技師さんのネームプレートを見た。
消毒の仕方・ゴム管の結び方・針の刺し方抜き方・絆創膏の貼り方・・時間にしたらほんの1、2分のかかわりだけれど、全てがとても乱暴な所作で、とても残念だった。
午前中の遅い時間帯だったためか、何となく片付け仕事的に感じてしまったのは、私だけだろうか?

会計を済ませ病院の外へ出ると、技師さんのことなどどうでもいいと思えるくらいの猛暑に、さらに残念な気持ちになる。
全国的に梅雨明けした空は、憎らしいほどに眩しく青い。





炎天下に駐車しておいた車の中は、息もできないくらいの熱気が充満している。
エンジンをかけ、急いで窓を開け、新鮮な空気を取り込むためにアクセルを踏む。
この頃、カーエアコンのスイッチは入れないようにしている。
ウィッグも帽子もない素頭に、直接当たる風を楽しめる運転中は、暑いけれどそれにも増して気持ちが良い。
幾筋にも流れる汗を体に感じながら、暑さに反応する体の代謝を実感できるのも嬉しい。



どんどん汗を流して、最後かもしれない夏を、楽しみたい。   (・e・)



小さな誇り
 


術後1年5ヶ月あまりで再発した時、セカンドオピニオンをとった。


「まだ、時間はあります。誇りを持って生きて下さい」



その時、誠実そうなDrが最後におっしゃった。
「誇り」という言葉の意味が理解できず、今日までずっと考えてきた。
がんになってしまい、その上、再発までしてしまった私が、何を誇りに生きていけばいいのか・・
失うものばかりで・・自慢に思うことなど一つもなかった。

でも、今、私は小さな誇りを持って生きている。

「同じ荷物を背負う同志して同じように歩いています。どうか、1人ぼっちにならないで・・」
「いつもいつも想ってます」
「 皆、同じような気持ちをかかえているよ」
「ひよこさんのこのサイトからいっぱいいっぱい優しい気持ちもらってるんですよ。辛いことも明るいこともたくさんあるけど、がんになって怖くてしんどいけど、ひよこさんのページをひらくときは同じように頑張ってる人たちに触れられて元気がでます。ありがとう。」
「私も皆さんと一緒でここにきたら、みんな頑張ってるから私も負けないぞと思わせてくれる場であります」・・・


誇れるような経歴は何一つ無いけれど、一緒に病を生きる仲間がいる。
顔も名前も知らないけれど、優しく温かい仲間がいる。
繋がっている仲間の一人ひとり、応援して下さるポイントの一つ一つ、寄せてくださるコメントの一つ一つ、全て誇りに思う。
あの時のDrの言葉が、少し理解できるようになった。

今、私は小さな誇りを持って生きている。





雨上がりの今朝、珍しく庭の草引きをした。
一日中降り続いた昨日の雨で、程よく湿った土は、草を引くのに丁度良い。
一時間ほど草引きをした後、心地よい疲労感と少しばかりの達成感を熱いシャワーで流した。
最近、眠れない夜が続いている。



今夜は、ぐっすり眠れるといいな。         (・e・)


ちょっと、ラッキー
 


フェマーラを飲み始めて9日。


前回のタキソテールから5週間以上過ぎた。



化学療法から解放された体は、副作用に苦しめられることもなく、少しずつ少しずつ生き返ってくるようだ。
それなのに・・気持ちは体ほど敏感に反応しない。
ホルモン療法になったからといって、特別に変わることなど何もなく、この体の中にあるがん細胞だけが静かに反応している。
自分の意思で選択した治療なのに、不安な気持ちに、毎日支配されている。

こんな気持ちでは、効くはずの薬も効果が半減してしまうかもしれない。







久しぶりに布草履を編んでみた。
腰をかばいながら、休憩しながら、編んでみた。
雨の音を聞きながら・・
何かに夢中になっている時は、余計なことを考えないですむから気持ちが落ち着く。



今朝、洗濯物を干す時、適当に準備したハンガーが過不足なくピッタリだった!
そんなことでも・・ちょっとラッキー☆          (・e・)



素直に生きる
 


落ち込んでも、事態は何も好転しない。


わかっていても、落ち込む。






がんと付き合い始めた頃は、“落ち込んではダメだ”と気持ちを奮い立たせ、逆にますます落ち込んだ。
そんな時は何をやっても上手くいかず、悪循環に陥った。
と言うより何をすることもできず、負の坩堝にはまり、そこからは簡単には抜け出せない。
苦しい時間を過ごし、ようやく這い上がり、死を意識しながらギリギリの気持ちを生きるようになってから、学んだ。

“落ち込んでもいいんだ”

季節が変わるように、川の流れが止まないように、同じ空はありえないように、生きているんだから気持ちだって日々揺れ動く。
ましてや、闘病という重たい荷物を背負いながらの身では、なおさらの事だと思う。
落ち込んだら、休んで、また前を向いて立ち上がればいい。
最近、ちょっと疲れて・・落ち込んで・・学んだことは、目の前にある今の幸せを見つめて、遠くの幸せは探さないこと。



自分の気持ちに素直に生きていきたい。         (・e・)



PS. 遅くなりましたが、6月26日(日)あけぼのハウスにご参加され、私の拙い                
    体験談を聴いてくださったみなさん。
    大切なお時間をありがとうございました。