「めんどくさいなぁ・・」
昨日の診察時、新しい主治医の口から出た言葉が、今も忘れられない。
それは、一日おきに注射している丸山ワクチンの予約をパソコンに入力する際、一日毎に入力しなければならないと判ったDrがボソッとつぶやくように言った言葉だった。
ただ単純にその作業がシステム上合理的ではなくて、主治医に悪気などないことと想像する。
いや・・そう思いたい。
確かに自由診療という位置づけのワクチン接種は、主治医にしてみればおそらく何の興味もなくただ煩わしいだけなのだろう。
何十人、何百人といるかもしれない主治医の患者の一人が、ワクチンを打とうが打つまいが、どうでも良いことなのかもしれない。
根治は無いと言われながらも「がん」と折り合いをつけ、より現実味を帯びた「死」と向き合いながら、より良いQOLを維持するために試行錯誤している一人の患者の治療は、主治医にとって日常のほんの一コマに過ぎないのかもしれない。
放射線治療をしている時にも、若い技師さんに言われた覚えがある。
「印が消えちゃうと・・めんどくさいことになるから・・・」
印の消えかけた胸壁に、マジックで新たな印を描きながらもう一人の技師さんにそう言った。
「めんどくさい」
そんな自分勝手な一言で片付けられてはたまらない。
こんな話を聞いた。
ある職場の若い人たちが「めんどくさい貯金箱」なるものを作った。
日常的につい「めんどくさい」という言葉を遣ってしまうことを意識的に無くそうという取り組みだと言う。
「めんどくさい」と言ってしまったらペナルティとしていくらかを貯金箱に入れるルールだそうだ。
そこにはお互いを思いやる気持ちや、気持ちよく働ける職場の環境づくりに繋がる前向きさがうかがえる。
いつかきっと素晴らしい職場になるに違いない。
それにしても、命を扱う医療者が患者の治療に際して「めんどくさい」と言うのはいかがなものか。
近所の春
医師の一言は、薬にもなるし凶器にもなりえる。
その一言で、立ち上がることもできれば、傷つくこともある。
患者はその言葉を一生忘れない。 (・e・)