20年ぶりにパスポートの申請をしてきた。
「ハワイへ行かない?」
姉と姪に誘われた。
「実家の父も誘って・・みんなで行こうよ。」
姪がフラダンスを習っていて、『いつか一緒に行けるといいね!』なんて冗談まじりに話していた昨年。
実現するとは思っていなかった。
この先ひよこは何年生きられるかわからない。
海外旅行も多発骨転移の身体ではもう無理かもしれない。
一度は“ハワイ”へ行きたいと思っていた。
こんなチャンス・・2度とないかもしれない。うん・・たぶん・・ない。
主人にお願いしてみた。
「遠慮せず・・行って来たらいい。お姉さんに感謝しろよ。」
初めての海外旅行は主人と行った新婚旅行。
ヨーロッパ・・イタリアとフランスだった。
バブル期に行った海外旅行が最後だった。
誰もが絶賛するハワイ。
ハワイの海を見てみたい・・大きく沈む夕日を見てみたかった。
実家の父も今年80歳。
初めての海外旅行・・その気になっているという。
姉と姪と父とひよこの4人で出掛ける憧れのハワイ。
パスポートの申請の時、迷った。
5年か10年か・・・
何度も何度も申請用紙に手をかけてはためらい・・自分の命に自信が無かった。
本当なら1回限りのパスポートでもいいのかもしれない。
でも・・10年にした。
今から10年後・・ひよこが存在するかどうかわからない。
あえて10年にした。 有効期限 2020年・・・
目標にしたい。
再発乳がん・肝転移をかかえながらパスポートの期限切れを目指したい。
笑われるかもしれない。
笑われたっていい。
この体に何が起こるかわからない。
誰にも想像もできない不思議や奇跡があるかもしれない。
再発患者の・・ひよこの挑戦です!
姪のTOKYO土産。
身内にはブログは公開していない。
でも・・ひよ子って・・・もしかしてバレてる???
サツマイモの味がしっかりしていて・・美味しかったよ!
来月のハワイ旅行に向けて・・点滴治療顔晴るよ!
Gem君にも顔晴ってもらわなきゃ ☆ (・e・)
2006年 12月
胸壁への再発と肝臓への遠隔転移のための抗がん剤治療を始めて一週間。
翌週は仕事へ出掛けた。
上司に現在の症状と今後の治療計画を伝える。
「日常生活が送れるうちは、仕事を続けたいと思います。」
再就職して7年目を迎えようとしていた当時、転勤の話も持ち上がっていた。
でも通院治療を余儀なくされるであろう今の状況で職場の環境が変わることは、自分にとって厳しかった。
慣れた職場で治療に専念したかった。
理解のある上司で良かった。
「人事部へは私から話しておきます。ひよこさんの身体が一番大事ですから、治療を優先していただいてかまいません。しっかり治して下さい。」
涙が出た。
やっかい者と言われても仕方の無いがん患者に・・温かかった。
でも同年代の女性も一緒に働くその職場は、想像以上につらかった。
抗がん剤治療を始めざるを得ない自分に最大級の気遣いや同情が向けられる。
感謝しなければいけないのに、何故か居心地が悪かった。
がん患者のひがみ?だろうか。
何の悩みもなさそうに明るく笑う彼女たちが羨ましく妬ましかった。
醜くなっている自分の心が・・哀れだった。
わかっているはずなのに・・仕事中涙がこぼれてくる。
誰にも気づかれないように、トイレへ逃げる。
声を押し殺して泣いた。
鏡に映る自分を励ました。
『ガンバレ!ひよこ!!』
鏡に映ったその顔は暗く・・遠い目をしていた。
無意識のまま・・・鬱への階段を一歩一歩降り始めていた。